M-BOMを作ったら、利益がアップした!
リードタイムが半分になった!
在庫が半減して、原価が激減した!
製造現場と管理プロセスに革命が起きた!
第三幕
■その2週間後の経営会議。かすかな希望の『改善案』
「さぁ内海君、発表してくれ。期待しているよ。」
会議室にメンバーが集まるやいなや、社長の鈴木が促した。
今回のプロジェクトのリーダーとなった内海はおもむろに切り出した。
「受注と納入が好調なのに利益が出ていない現象の原因は、製品別にみた場合、製造原価が最終的に営業時点の予測を上回るケースが多発するためでした。さらにその原因について、先日の議論をまとめると次のようになります。」
問題点のまとめ
- 営業段階で使用される見積もり標準は、「標準」ではなく、最初から精度に問題が有る
- 設計・部品手配・製造の各プロセスで、多くのロスとコストが発生し製造原価を押し上げる
「もともと見積もりの精度に問題が有るので、受注時点で、既に最終製造原価が上回る恐れが発生します。これに加え、その後の工程で予想以上のコストが発生し、さらに最終製造原価を膨張させます。
つまり、
こういうことです。」
その原因
- 見積もり標準とは、あくまで参考になると思われる過去の製番毎の製造原価実績を、製品毎に割り振った物であり、実態はKKD=勘と経験と度胸(営業上の見切りや都合)で原価を設定している
- (種類、組み合わせのシステム、構成台数等で似たものを探して参考にしているだけ)
- 設計・購買・製造のプロセスで、それぞれ多大な待ち時間のロスが発生し、そのことがリードタイムを間延びさせ、部品や仕掛品の在庫を増大させている
- 工程では何が起こるかわからないため、自分の関係する箇所では余裕率を見て、
- 資源(時間・モノ・人)を確保するため、全体で見ると必要以上の資源が使用されている
「具体的な現象として、現場では次のようなことが起きていることが分かりました。」
派生問題点:現象
- 営業見積もり段階、受注予想段階、受注段階のいずれのタイミングにおいても精度の高い予算が組めない
- 出図に時間がかかる為に、長納期品は先行発注をかけるが、それでも個々に納入遅れは発生し工程が時々止まる
- 工程が止っても別の物を生産出来るように、中間の仕掛が多く存在する為余分な管理コストが発生している
- 過去の部品情報はその設計者の頭の中にしかなく、以前担当したものしか分からない為本来は類似のもので、部品の共通化が出来るものであっても、情報共有が無いので出来ない
- 途中の滞留時間が多い為、全体のリードタイムの長期化に繋がっている.
「それでは、こういった問題を解決するための解決の方向性は何か?ということになりますが、それは極めてシンプルです。」
解決策まとめ
- 製品タイプごとに基準となるM-BOM(製造部品表)を先ず整備すること. そして順次精度を上げていくこと
- 整備されたM-BOMに基づいて日々の生産計画をしっかり立て、各部門はその計画通り調達/生産すること
「この二つを実現すれば、これまでの問題はほとんどが解決もしくは大幅に改善されると思われます。」
「ポイントが、標準M-BOMだという理屈はその通りだと思う。しかし、内海君、これは君たちのいつもの口癖だが、規格品ではない、一品受注生産の我が社で、そんなことが可能なのか?」
社長の鈴木は、これまで繰り返し聞いてきた「言い訳」を逆に投げかけてみた。
それには構わず、内海は続けた。
「もしこの二つが可能になれば、次のようなことが、連鎖的に可能になるはずです」
解決策の概念
- 見積りも、部品手配の工程も標準化し、標準と差異の出る部分に人員勢力を張り付ける
- これにより、設計出図・部品手配のリードタイムを短縮し、製造仕掛り在庫を減らし、製造リードタイムを短縮する
- 標準部品と標準工程のデータを基準に、新規対応部分の予測を入れて、営業見積もり段階の精度を上げて、受注価格の下値を把握し、営業交渉を有利に展開し、利益の出る受注を行う
- 標準との差異部分について仕様を固めながら、不可測のコスト発生の幅を狭め、コスト予測の精度を高め、これまで製番単位での結果としての「どんぶり」利益管理だった世界に、個々の製品毎の最終原価が把握できる仕組みを実現する
「これを可能にするための成功要因は、ひとえに次のことができるかどうかにかかっています。」
独自の解決策
- 実際の製造に当たって標準と照らし合わせることによって、標準部品で対応できる部分と、対応できない部分を迅速に見極めるシステムを作り上げる
「うーん、そんなことが、我が社で出来れば、これは製造革命だ!業界でも先例がないんじゃないか!?内海君、君たち、これを本当にやる気か?」
はっきり言って期待を超える内容だった。内海たちがここまで言い切ることが出来ることに、驚きを隠せないといった様子で、鈴木がうなった。
「社長、実は、本日はこの分野で実績を持っている、助っ人に来て頂いています。ご紹介したいと思います。」
別室に控えていたスーツ姿の二人の男が、内海に招かれ会議室に入ってきた。
実現に向けて
「D&Mソリューションの塩野と申します。」「同じく松川と申します。」
「社長、今回はこのお二人のお力を借りて、我が社のプロジェクトを進めたいと考えています。いや、お二人のこの分野での経験と、専門的なノウハウがなければ、我々は暗闇の中を明かりも持たずに走るマラソンランナーのようなもので、ゴールにたどり着ける自信がありません。」
内海は社長に懇願するような口調でこう言うと、今度は二人の男の方に促した。
「先日お二人のセミナーをお聞きし、私は目からウロコでした。私たちは、このプロジェクトで達成しなければならないゴールは分かっています。ただ、たどり着き方が、つまりHOWの見当がつきません。そのHOWについて、簡潔にポイントを再度お話し願えませんか?」
会議室の一同の視線が二人の男に注がれた。やがて二人のうちの片方、松川が穏やかに、講義を始めた。
「まずは、部品表、M-BOMの役割からお話しましょう。そして、部品は実は製造工程にぶら下がっているのだということから始めましょうか。・・・」
そして、松川の穏やかだが、自信に満ちた力強い声が、会議室の空気を支配し始めた。




